腕神経叢(わんしんけいそう)とは
腕神経叢損傷(腕神経叢麻痺)
腕神経叢損傷は主に交通事故(多くはオートバイ事故)と分娩時の過大な牽引力が腕神経叢にかかることにより発生します。これ以外に腫瘍や放射線障害などで腕神経叢麻痺を起こすこともあります。
損傷程度
3ヶ月位で麻痺が自然回復します。神経外周も軸索も切れていないのに、神経自体がショックに陥り、麻痺している状態があります。これを神経虚脱と私達は呼んでいます。3週間以内に麻痺は回復してきます。腕神経叢損傷では上記の4つの損傷程度が各神経に混在して、麻痺の症状を複雑にしており、診断・治療を困難にしているのです。
損傷高位レベル
損傷神経番号と数
腕神経叢損傷の麻痺の型には全型、上位型、全型不完全回復型の3型があります。
全型は第5頚髄神経根から第1胸髄神経根が全て麻痺する型で、上肢は肩・肘・手首・手指が全く動きません。
上位型は腕神経叢神経根の上位神経根から麻痺していく型で、一般には第5・6神経根型、第5,6,7神経根型、第5~8神経根型があります。
各々、肩・肘の麻痺、手首の麻痺が加わったもの、更に手指の運動の一部が麻痺したものがあります。
各々、肩・肘の麻痺、手首の麻痺が加わったもの、更に手指の運動の一部が麻痺したものがあります。
これに神経根だけでなく、上図のように神経幹、神経束と呼ばれる部位での損傷が加わることにより、麻痺の形態が複雑になっているのです。
なお、古い教科書には下位型といった麻痺がありましたが、これは全型麻痺の一部、特に第5頚髄神経根の麻痺が部分回復したものであり、現在は全型麻痺不完全回復型と呼ばれています。
なお、古い教科書には下位型といった麻痺がありましたが、これは全型麻痺の一部、特に第5頚髄神経根の麻痺が部分回復したものであり、現在は全型麻痺不完全回復型と呼ばれています。
診断のポイント
腕神経叢麻痺が自然回復するか、手術で神経がつなげるかの判断のポイントは、神経が①脊髄で引き抜かれているか、②神経損傷の程度、③麻痺の型になります。特に、①脊髄から引き抜かれていないかどうかの判定が重要です。
この判定には臨床症状もある程度参考になりますが、脊髄造影、CTミエロ、MRI、電気生理学診断の補助診断が必要です。右図は脊髄造影の写真です。
矢印が引き抜き損傷に特有の偽性髄膜瘤です。
この判定には臨床症状もある程度参考になりますが、脊髄造影、CTミエロ、MRI、電気生理学診断の補助診断が必要です。右図は脊髄造影の写真です。
矢印が引き抜き損傷に特有の偽性髄膜瘤です。
このような引き抜き損傷の所見があれば、いくら待っても自然回復はありませんので、早期に腕神経叢を展開して、再建手術をする必要があります。
ただ、脊髄造影、CT-ミエロ,MRIなどの画像診断でも引き抜き損傷かどうかを100%診断することはできせん。
このような場合には手術的に損傷された腕神経叢を展開して、電気刺激を行い、電気生理学的検査(誘発脊髄波など)を行います。